令和4年夏季企業訪問①

今夏、遠農卒業生の勤める会社を訪問しました。
その時の様子を2つに分けてご報告します。

令和3年度卒業生 桑 名 琴 美 さん
街の喧騒を感じさせない落ち着いた場所に有限会社坂東牧場( 沙流 さる 郡日高町)はある。そこには映画『優駿』に見るようなロケーションが広がっていて、時折吹く風も爽やかだ。

 坂東牧場は、サラブレッドの総合牧場として 預託 よたく 、繁殖、育成、調教を行っている。特に様々な馬主からサラブレッドを預かる預託業務を中心に行っており、一頭一頭を丁寧に育てるための設備も充実している。

 この日の夕方、桑名さんは厩舎の中で飼い葉をほぐす作業の手を止めて、優しい笑顔で迎えてくれた。卒業して間もないが、すでに社会人らしいたくましさを感じる。今の仕事に充実感を覚えてもいるようだ。 

 桑名さんはサラブレッドの世話をする厩務員。厩務員は主に馬の手入れ、餌やり、厩舎の清掃、放牧・集牧等、サラブレッドと身近に関わる仕事をする。率直にやることがたくさんあって大変な仕事だなと思ったが、桑名さんはサラブレッドの世話をすることに魅力を感じているという。自分が馬に手をかける分、馬から相応の反応があるからだ。おそらく馬との信頼関係が築き上げられていく手応えもあるのだろう。馬は人間の4〜5歳の子供と同じくらいの知能を持っていて、世話をする人間の性格等は見極めることができるらしい。桑名さんは、私は馬になめられていると言っていたが、おそらく本当はそうではなくて、多くの馬から懐かれ愛されているのだと思う。

 

高校時代に学んだことの中で、今役に立っていることはありますか?という問いに、桑名さんから

 

「言われる前に自ら動くこと」という答えが返ってきた。当時を振り返ってみると、確かに探究活動では実験、調査を人知れず行っていたし、周囲に対する気配りも良くできる生徒だった。日々たくさんの任務に当たる厩務員にとって「言われる前に自ら動く」というスタンスで働く桑名さんは、きっと頼もしい存在に映っていることだろう。

 一方で、桑名さんは社会人になって、気持ちのオン・オフの切り替えが大切なことに気づいたという。例えば、高校時代はプライベート上の気持ちの落ち込みを翌日そのまま学校に持ち込んでしまったこともあったようだが、現在、会社で働く身としては、そういうわけには行かないことを身にしみて理解しているということだ。

 坂東牧場を訪問して最も印象に残っていることは、桑名さんを含め皆さんが優しく迎えてくれて、明るい挨拶をしてくれたことだ。結局私はそのご厚意に甘えてこの牧場に1時間半も滞在してしまった。どこのエリアに行ってもウエルカムな雰囲気で接してくれる皆さんのおかげで、私はたいへん居心地が良かったのだ。

優しさは人にも伝わるし、きっと馬にもそれは伝わっている。

 桑名さんは職場に恵まれた一人だと思う。
文:岡崎